摂食・嚥下障害
概要
摂食・嚥下障害とは、口から食べる機能の障害のことです。私たちは普段、意識していませんが、食べ物を目やにおいで認識し、口まで運び、口の中に入れて噛み、ゴックンと飲み込むことで、食物や液体を摂取しています。これらの動作の1つまたは複数が何らかの原因で正常に機能しなくなった状態をいいます。
嚥下障害で起こる問題点
- 栄養摂食不良. 脱水症.低栄養
- 誤嚥. 呼吸器合併症(肺炎.窒息)
- 食べる楽しみの喪失
加齢の嚥下障害
認知機能
- 摂食意欲の低下による摂食拒否
- 注意力の持続の低下やつ遂行機能障害による食事動作の停止
- 理解力や記憶力の低下による食物認知の低下
嚥下反射
抹消受容器の変性、萎縮、神経伝達速度の低下、中枢神経の退行変性嚥下運動時の喉頭閉鎖開始が遅れ、喉頭侵入と誤嚥の原因。
85歳以上では、咽頭期での嚥下反射の惹起が遅延し、液体の流入に対して喉頭閉鎖のタイミングが遅れ喉頭侵入をと呈しやすい状態になりやすい。
加齢に伴う嚥下機能低下の原因
- う歯、義歯の問題
- 唾液の性状・量の変化
- 口腔、咽頭、食道などの嚥下に関わる筋力の低下
- 無症候性脳血管障害
- 注意力、集中力、体力の低下、免疫力の低下
摂食場面の観察ポイント
食物の認識 | ボーとしている。キョロキョロしている。 |
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食器の使用 | 口に到達する前にこぼす。 口からのこぼれ。 |
下反射が起こるまで | 長い時間口にため込む 努力して嚥下している 上を向いて嚥下している |
摂食場面の観察ポイント
むせ | 特定のものでむせる=誤嚥、咽頭残留 食事初めにむせる=誤嚥、不注意 食事の後半にむせる=誤嚥、咽頭残留 |
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疲労、筋力低下
声 | 食事中、食後に声が変化する=誤嚥 |
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咽頭残留
疲労 | 食事の途中から元気がない |
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嚥下造影検査
- X線透視化で造影剤を含んだ検査食を飲み込む
- 口腔・咽頭・食道の動きを評価
- 口腔・咽頭・食道の構造を評価
- 食塊の動きを評価
嚥下障害のリハビリテーション
間接リハビリテーション | 口唇・舌の可動域の練習 構音練習 口腔ケア |
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直接リハビリテーション | 嚥下訓練食を実際に摂取してもらう。 摂食姿勢 摂食介助法 |
嚥下姿勢
- 枕は後頚部だけでなく、頚部から肩にかけて支持する
- リクライニング位は 30°~60°の体幹角度を目安に
- 頚部前屈はオトガイから鎖骨まで3~4横指の距離
嚥下造影検査の有用性
嚥下造影検査(VF)ではX線透視装置を用いて造影剤を混ぜた食物を食べて飲み込みの様子を観察する検査で、実際の食物の流れを直接見ることができます。
- 飲み込んだ食べ物が気管に入り込んだり、食道から戻ったりしないかどうか(誤嚥や逆流の有無)
- 口に入った食べ物がどの様に食道まで運ばれるか(咀嚼・送り込み・残留など)
- どの様な食形態ならば安全に食べることが出来るか(食品の種類、硬さ、形状、トロミなど)
- どの様な環境で安全に食べることが出来るか(体位・姿勢の調整、一口量、工夫等)などを評価します。
この検査の結果をふまえて、今後の食事形態や食事時の姿勢の調節、嚥下訓練の適応、方針を決定し、患者様がお食事を安全に楽しんでいただくためのお手伝いをしていきましょう!!
症例
79歳 男性 胆管炎、誤嚥性肺炎で入院
検査食:ゼリー、ペースト食、ソフト食、キザミ食、粥ゼリー、全粥
体幹角度60°頚部屈曲角30°
VF評価:咀嚼機能が良好。食道入口部の通過に時間がかかるもゼリー等の交互嚥下により解消されるため、経口摂取可能と判断。その後訓練により、ご飯、軟菜キザミ、ゼリーの食事内容で経口摂取可能となり退院に至った。